支援士に合格しても「登録」しなかった理由。15万円の維持費と天秤にかけた結論

IT資格

はじめに:合格後の「おめでとう」の後に来る現実

情報処理安全確保支援士(SC)試験に合格すると、IPAから合格証書とともに「登録の手引き」が届きます。そこには、登録することで「情報処理安全確保支援士」という名称を独占的に使用できること、そして登録を維持するための義務が記されています。

合格の余韻に浸る中で、多くの合格者がまず驚くのが、その「維持費の高さ」です。私も合格した直後、真剣に悩みました。そして出した結論は、現時点では「登録しない」という選択でした。

なぜ、苦労してリベンジ合格まで果たした資格を登録しなかったのか。そこには、感情論ではない論理的な損得勘定があります。

恐ろしく高い「維持費」の具体的内訳

まず、登録を維持するためにかかる費用を整理しましょう。支援士は、登録後に定期的な講習を受けることが法律で義務付けられており、これに従わない場合は登録が取り消されます。

講習の種類頻度費用(税込)
オンライン講習毎年(1年に1回)20,000円 × 3回 = 60,000円
実践講習または特定講習3年に1回80,000円〜90,000円程度
合計(3年間)約140,000円〜150,000円

※別途、初回登録時に登録免許税(9,000円)と手数料(10,700円)がかかります。

3年ごとに約15万円。これは、他のIT系国家資格(応用情報など)が「一度取れば一生有効」であることと比較すると、極めて異例のコストです。

「サンクコスト」と「投資対効果(ROI)」の葛藤

行動経済学には「サンクコスト(埋没費用)効果」という概念があります。「これだけ苦労して勉強したんだから、登録しないともったいない」という心理です。しかし、賢明な判断を下すには、過去の努力ではなく「これからの15万円が、それ以上のリターンを生むか」というROI(投資対効果)に目を向ける必要があります。

私が登録を見送った判断基準は、主に以下の2点です。

① 「名称独占」の市場価値

支援士は、登録しなければ「支援士」と名乗れません。しかし、転職市場や実務において高く評価されるのは、実は「支援士試験に合格できるだけの知識があること」そのものです。 履歴書に「情報処理安全確保支援士試験 合格」と書くことは、未登録であっても許されます。多くの企業にとって、この一文だけで「高度なセキュリティ知識の証明」としては十分なのです。

② 自腹で払うには「シグナリング効果」が薄い

もし勤務先が15万円を全額負担し、かつ資格手当が出るのであれば、迷わず登録すべきでしょう。しかし、完全自腹の場合、15万円を払って得られる「名刺にロゴを載せる権利」は、個人開発者やフリーランスのセキュリティコンサルタントでもない限り、コストに見合うメリット(シグナリング効果)が薄いと判断しました。

「合格者」というステータスだけで得られるもの

登録を見送っても、私が手に入れた「AP+SC合格」という事実は消えません。

  • 知識の証明: 難関試験を突破したという客観的なエビデンス。
  • 午前I免除: 今後2年間、他の高度試験を受ける際の大きなアドバンテージ。
  • 自己肯定感: リベンジを果たしたという成功体験。

これらは登録の有無にかかわらず、私のエンジニアとしてのキャリアを支えてくれます。15万円という大金を講習に投じるなら、今は新しい技術書を買い、別の新しい資格試験の受験料に充てる方が、自分自身のアップデートに繋がると考えました。

まとめ:納得感のある選択を

私が登録しなかったのは、支援士を軽視しているからではありません。むしろ、その知識の価値を認めているからこそ、「形(登録証)」よりも「実(知識)」を優先した結果です。

もちろん、将来的にセキュリティコンサルタントとして独立したり、会社から強い要望があれば、いつでも登録申請は可能です。

「受かったら登録しなきゃいけない」という固定観念に縛られる必要はありません。

  • 会社が費用を負担してくれるか?
  • その「肩書き」が今すぐ業務に必要か?
  • 15万円を上回るリターンが想像できるか?

この3点を自分に問いかけてみてください。もし答えが「No」であれば、私のように「未登録の合格者」として、堂々と胸を張って次のステップへ進むのも、立派な戦略的選択です。

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