はじめに:敬語は「暗記」ではなく「主語の特定」
秘書検定2級の学習において、多くの受験生が最初に突き当たる壁が「敬語」です。尊敬語と謙譲語が混ざり合い、どれが正しいのか分からなくなる……。そんな悩みを抱える人は少なくありません。
しかし、敬語の正体は非常に論理的な「パズル」です。合格のために必要なのは、無数の言葉を丸暗記することではなく、「その動作をするのは誰か(主語)」を特定し、機械的に形を当てはめる「判別ロジック」を身につけることです。本記事では、試験会場で迷いをゼロにするための具体的な攻略フローを解説します。
なぜ敬語で「混乱」が起きるのか
私たちが日常で使っている敬語は、実は「なんとなく丁寧な言葉」であることが多いです。しかし、秘書検定では「相手を立てる(尊敬)」のか「自分を下げる(謙譲)」のかを明確に区別することが求められます。
混乱を避けるための大原則は一つだけです。 「その動作(動詞)の主語は、相手か? 自分か?」 これさえ見失わなければ、敬語問題の8割は自動的に解けます。
ステップ1:主語による「自動判別フロー」を回す
問題文を読んだら、まず「その動作の主」が誰かを判断してください。
主語が「相手(上司・顧客)」の場合 ⇒ 【尊敬語】
相手の動作を「持ち上げる」ことで敬意を示します。
- 基本形: お(ご)+ [動詞] + になる
- 例:
- (相手が)書く → お書きになる
- (相手が)待つ → お待ちになる
- (相手が)帰る → お帰りになる
主語が「自分(または自分の身内)」の場合 ⇒ 【謙譲語】
自分の動作を「へりくだる」ことで、相対的に相手を高くします。
- 基本形: お(ご)+ [動詞] + する(いたす)
- 例:
- (自分が)書く → お書きする
- (自分が)待つ → お待ちする
- (自分が)帰る → (※自分に「お帰り」は不自然なので「失礼する」など)
覚え方のコツ: 「お〜になる」は相手、「お〜する」は自分。 試験中、迷ったら「主語は誰?」と自分に問いかけ、この公式に当てはめてください。これだけで選択肢の「あべこべ」を瞬時に見抜けます。
ステップ2:形がガラッと変わる「特殊な7選」を制す
基本形(お〜になる/する)が使えず、言葉そのものが変化する動詞があります。これらは試験で最も狙われるポイントですが、逆に言えば「これだけ」覚えてしまえば得点源になります。以下の対照表をセットで暗記してください。
| 元の動詞 | 相手が主語(尊敬語) | 自分が主語(謙譲語) |
| 言う | おっしゃる | 申し上げる(申す) |
| 行く・来る | いらっしゃる | 伺う(参る) |
| 居る(いる) | いらっしゃる | おる |
| 食べる | 召し上がる | いただく |
| 知っている | ご存知である | 存じ上げている |
| 見る | ご覧になる | 拝見する |
| する | なさる | いたす |
覚え方のコツ:「拝見(はいけん)」の「拝」は「拝む(おがむ)」という漢字です。自分が頭を下げる動作ですから、「自分が主語=謙譲語」とイメージで結びつけましょう。「拝読(はいどく)」「拝聴(はいちょう)」もすべて自分側の動作です。
ステップ3:検算テクニック「二重敬語」を排除する
せっかく正しい敬語を選んでも、過剰に丁寧にしてしまうと「間違い」になります。これを「二重敬語」と呼びます。
- 不適切な例: おっしゃられる(おっしゃる + られる)
- 不適切な例: ご覧になられる(ご覧になる + られる)
- 正しい例: おっしゃる / ご覧になる
ハックのポイント:特殊な形(おっしゃる、なさる等)に変身した言葉には、後ろに「れる・られる」を絶対に足さないと決めておきましょう。これだけで記述問題での減点を防げます。
実戦:社外の人に対して「自分の上司」をどう呼ぶか
秘書検定2級でよく出るひっかけが、「社外の人に対して、自分の上司の動作をどう言うか」です。
- 問題: 社外の人に対し、「上司(佐藤部長)はもう帰りました」と伝えたい。
- NG: 「佐藤部長はお帰りになりました」
- OK: 「部長の佐藤は帰宅いたしました」
解説: 社外の人に対しては、自分の上司も「自分側(身内)」とみなします。そのため、上司の動作であっても【謙譲語(いたす、おる等)】を使い、役職名ではなく呼び捨てにするのが社会人の正解です。これは「身内を下げて、相手を立てる」という高度な謙譲の形です。
まとめ:敬語は「誰が動くか」のパズルである
敬語は単なるマナーではなく、相手との距離を測る論理的なツールです。
- 主語を特定する(相手か? 自分か?)
- 基本形(になる?する?)を当てはめる。
- 特殊な7選(おっしゃる等)はセットで暗記。
- 二重敬語(れる・られる)をつけないよう検算する。
このステップを繰り返すうちに、考えなくても反射的に正しい敬語が出てくるようになります。
次回、第2回は敬語の応用編として、「試験に出る特殊動詞と言い換え表現」を深掘りします。「ご苦労様」と「お疲れ様」の使い分けなど、より実戦的な内容をお届けします。


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