はじめに:慶事は「喜びを分かち合う」マナー
前回の弔事(お悔やみ)が「悲しみに寄り添う」ための控えめな作法だったのに対し、慶事は「喜びを表現し、さらなる繁栄を願う」ための華やかな作法です。
秘書検定2級では、ご祝儀袋の「水引(みずひき)」の使い分けや、お中元・お歳暮といったビジネス贈答のルールが頻出します。弔事のルールと混同しないよう、対比させながら覚えるのが攻略の近道です。
水引の使い分け:蝶結び vs 結び切り
お祝い事における最大のポイントは、水引の形です。これ一択で「常識があるかどうか」が判断されます。
- 蝶結び(花結び): 何度も結び直せることから、「何度あっても嬉しいお祝い」に使います。
- 例: 出産、入学、昇進、お中元、お歳暮、開店祝い
- 結び切り: 一度結んだら解けないことから、「二度と繰り返さないでほしいお祝い」に使います。
- 例: 結婚、快気祝い(病気が治ったお祝い)
ハックのポイント: 「結婚」は一生に一度(という願い)なので結び切りですが、「出産」は何度あっても嬉しいことなので蝶結びです。試験で「出産祝いで結び切り」という選択肢が出たら、迷わず除外しましょう。
のし紙の書き方と「内祝」の意味
贈り物を包む「のし紙」のルールも、記述問題でよく狙われます。
- 表書き: 水引の上中央に「御祝」「御結婚御祝」「内祝」などを書きます。
- 名入れ: 水引の下中央に、贈り主(自分や会社名)の姓名を書きます。相手の名前ではないことに注意してください。
- 「内祝(うちいわい)」の正体: 本来は「自分の家のおめでたいお裾分け」という意味ですが、現代では主に「いただいたお祝いへの返礼品」として使われます。
覚え方のコツ: 「お返し」という言葉を直接使うのは、「もらったから返す(義務)」というニュアンスが出てしまうため、マナーとしては避けます。代わりに「内祝」という言葉を使うのが大人の配慮です。
贈答のタイミング:お中元とお歳暮
ビジネスシーンで欠かせない贈答の時期は、地域による差も含めて試験に出ることがあります。
- お中元(夏):
- 関東:7月初旬〜7月15日頃
- 関西:7月中旬〜8月15日頃
- お歳暮(冬):
- 12月初旬〜12月20日頃(25日を過ぎると正月準備で忙しくなるため、早めに届けるのがマナー)
ハックのポイント: もし時期を逃してしまったら、お中元は「暑中御見舞」や「残暑御見舞」、お歳暮は「御年賀」や「寒中御見舞」に表書きを変えて贈るのが、秘書としてのリカバリー術です。
手土産の渡し方:紙袋は「ゴミ」と考える
お客様の会社を訪問し、手土産を渡す際の動作には明確な順序があります。
- タイミング: 挨拶を済ませ、応接室などで席に着く前(または着いてすぐ)に渡します。
- 紙袋から出す: 紙袋のまま渡すのはNGです。紙袋から取り出し、正面を相手に向けて両手で差し出します。
- 紙袋の扱い: 紙袋は手早く畳んで持ち帰るのが原則です。
- 言葉添え: 「つまらないものですが」は最近ではあまり使われません。「心ばかりの品ですが」「地元で評判のお菓子ですので」といった、相手への配慮が伝わる言葉を添えます。
覚え方のコツ: 「紙袋は、運ぶ際についた汚れやホコリを防ぐためのカバー」です。そんな「汚れがついた可能性のあるもの」を相手に渡してはいけない、と考えれば、袋から出す理由が納得できるはずです。
まとめ:慶事は「ポジティブな理由」を添えて
第11回のポイントを整理します。
- 「何度あっても良い」なら蝶結び、「一度きり」なら結び切り。
- 「内祝」はお返しとして使う魔法の言葉。
- 贈答は時期が命。遅れたら表書きを変えて対応する。
- 手土産は「カバー(紙袋)」を取って、正面を向けて渡す。
慶事のマナーは、相手を祝福する気持ちを「正しく伝えるための言語」です。ルールを正しく守ることで、あなたの「おめでとう」の気持ちがより深く、正確に相手に届くようになります。
次回、いよいよ本シリーズの最終回、第12回は「状況判断:思考編」です。これまでに学んだすべての知識を動員し、「複数のトラブルが重なった時に、秘書A子さんはどう動くべきか」という、2級の最難関セクションを攻略します。


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