はじめに:状況判断は「マナーの総合格闘技」
秘書検定2級の試験問題に必ず登場する「秘書A子さん」。彼女は常に、複数の仕事や予期せぬトラブルに囲まれています。 「上司に急ぎの書類を頼まれた瞬間に、アポなしの客が来た。さらに電話が鳴り響いている……」 こうした状況で、A子さんが取るべき行動を選択するのが「状況判断問題」です。
ここは単なる暗記では太刀打ちできません。これまでに学んだ敬語や接遇の知識を、現場の優先順位に沿って組み立てる「判断のロジック」が必要になります。今回は、どんなパニック状況でも正解を導き出すための思考法を整理します。
優先順位を決める3つの「絶対評価軸」
複雑な状況を整理するために、秘書には共通の「優先順位アルゴリズム」があります。迷ったら、以下の順番で価値判断を行ってください。
- 「今、目の前にいる人」への配慮(対面 > 非対面) 電話よりも、目の前にいる来客や上司の対応を優先するのが基本です。
- 「急ぎ・重要」な案件の選別(緊急度 > ルーチン) 上司の指示が「急ぎ」であれば、自分の定時業務は後回しにします。
- 「会社の顔」としての体面(社外 > 社内) 社内の会議の準備よりも、社外からの大切なお客様への対応を優先します。
覚え方のコツ: 「誰を一番待たせてはいけないか」を考えると、答えが見えてきます。電話はあとでかけ直せますが、目の前のお客様を放置するのは最大の失礼にあたります。
ケーススタディ①:来客が重なった場合
- 状況: 予約のあるお客様(B氏)をご案内中に、予約のない別のお客様(C氏)が受付に現れた。
- A子さんの正解: まずB氏を応接室までご案内し、「少々失礼いたします」と断ってから受付に戻り、C氏の用件を伺う。
ハックのポイント: 「二兎を追う」のではなく、「今行っている動作を区切りが良いところまで完遂し、かつ後から来た人を無視しない」のがポイントです。B氏を廊下に立たせたままC氏の対応をするのはNG、逆にC氏を完全に無視して案内を続けるのもNGです。
ケーススタディ②:上司の指示とトラブルの衝突
- 状況: 上司から「10分後の会議資料をコピーしてくれ」と頼まれたが、コピー機が故障。さらにそのタイミングで電話が鳴った。
- A子さんの正解: 電話は他の人に頼むか、一旦受けて折り返しにする。コピー機については「あいにく故障しておりますので、他部署のものを借りてまいります。5分ほどお時間をいただけますか」と上司に状況と見込み時間を報告し、許可を得て動く。
覚え方のコツ: 秘書の仕事で最も重要なのは「上司を不安にさせない報告」です。勝手に他部署へ走り、10分後に「コピー機が壊れていたので遅れました」と手ぶらで戻るのが最悪のパターンです。トラブルが起きたら即、状況と代案をセットで報告しましょう。
記述問題で使える「秘書的フレーズ」
状況判断の記述問題では、行動だけでなく「何と言って動くか」が問われます。以下のフレーズは、どんな状況でも使える「万能プラグイン」です。
- 中座する時: 「恐れ入りますが、少々失礼いたします」
- 待たせる時: 「〇分ほどお待ちいただけますでしょうか」
- 代案を出す時: 「〇〇は不在ですが、私でよろしければお話を伺いましょうか」
- 上司への報告: 「〇〇の件でトラブルが発生しました。つきましては、〜してもよろしいでしょうか」
ハックのポイント: 自分の判断で勝手に動くのではなく、「〜してもよろしいでしょうか」と上司に仰ぐ(お伺いを立てる)姿勢を見せることで、記述問題での評価が確実に上がります。
まとめ:状況判断は「冷静なパズル」
本シリーズ全12回を通じて学んできたことは、すべてこの「状況判断」を正しく行うためのパーツでした。
- 敬語(第1・2・3回): 正しい言葉で、相手との距離を測る。
- 接遇・席次(第4〜7回): 相手を最も心地よい場所へ導く。
- 文書・贈答(第8〜11回): 形に残るもので信頼を築く。
これらを組み合わせ、A子さんというフィルターを通して「今、何が最適か」を導き出すのが秘書検定2級のゴールです。
シリーズ完結にあたって
全12回、お疲れ様でした! 秘書検定2級の範囲は広いですが、その根底にあるのは「相手を思いやるロジック」です。試験勉強を通じて身につけたこの「ビジネスの基礎」は、合格証書以上に、あなたのこれからのキャリアを支える強力な武器になるはずです。
本ブログを通じて、一人でも多くの社会人が自信を持って仕事に向き合えるようになることを願っています。


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