IDaaS(Identity as a Service)とは?クラウド時代のID管理を一元化するメリット

IT用語

リモートワークの普及や、業務でのSaaS(Software as a Service)利用が当たり前になった現代、企業が管理すべき「ID」と「パスワード」の数は膨大になっています。これまで解説してきた第38回IAM(ID管理)や第39回ゼロトラストの考え方を、クラウド上で効率的かつセキュアに実現するのがIDaaS(Identity as a Service)です。

豆知識:IDaaSの読み方 一般的には「アイダース」と読みます。「ID(アイディー)」と「as a Service(アズ・ア・サービス)」を組み合わせた造語で、SaaS(サース)やPaaS(パース)の仲間と考えると覚えやすいでしょう。

今回は、IDaaSが提供する主な機能や、導入によって得られる具体的なメリット、そして主要なサービスについて詳しく解説します。

IDaaSが提供する4つのコア機能

IDaaSは、従来の社内サーバー(Active Directoryなど)で行っていたID管理をクラウドへ移行し、さらに高度なアクセス制御を付与したサービスです。主に以下の4つの機能を備えています。

① シングルサインオン(SSO)

第35回で解説したSSO(シングルサインオン)を提供します。一度のログインで、Microsoft 365、Slack、Salesforce、Zoomなど、連携しているすべてのSaaSへ安全にアクセスできるようになります。

② 多要素認証(MFA)

第36回で詳しく触れた多要素認証を、すべてのアプリに対して一括で適用できます。スマホアプリによる承認、SMS、生体認証など、組織のポリシーに合わせた柔軟な強化が可能です。

③ IDライフサイクル管理(プロビジョニング)

人事システムなどと連携し、ユーザーの入社・異動・退職に合わせて、各SaaSのアカウントを自動で作成・変更・削除します。これにより、退職者のIDが残り続けるといったセキュリティリスクを排除します。

④ アクセスポリシー制御(認可の最適化)

第40回で解説した最小権限の原則(PoLP)に基づき、「社内IPからのみアクセス許可」「会社支給のデバイス以外はNG」といった条件付きアクセスを細かく設定できます。

IDaaS導入のメリット:管理者とユーザー双方の視点

IDaaSを導入することで、情シス担当者(管理者)と一般ユーザーの双方に大きな恩恵があります。

管理者側のメリット

  • 運用コストの削減: パスワードを忘れたユーザーへの対応(リセット作業)や、手動でのアカウント作成から解放されます。
  • ガバナンスの強化: 「誰がいつどのアプリにログインしたか」のログを一箇所で確認できるため、監査対応が非常にスムーズになります。
  • 迅速なゼロトラスト移行: 既存のオンプレミス環境を大きく変えることなく、高度なセキュリティ環境へ移行できます。

ユーザー側のメリット

  • 利便性の向上: サービスごとに異なる複雑なパスワードを覚える必要がなくなり、業務効率が上がります。
  • セキュアなリモートワーク: 自宅や外出先からでも、会社が決めた安全なルール(MFA等)に則って、安心して業務アプリを利用できます。

主要なIDaaSサービス

現在、世界的に広く利用されている主要なIDaaSには以下のようなものがあります。

  • Microsoft Entra ID (旧称: Azure AD): Windows環境やMicrosoft 365との親和性が極めて高く、多くの企業で導入されています。
  • Okta Workforce Identity: 独立系の強みを活かし、数千ものSaaSと高い精度で連携できるリーディングカンパニーです。
  • HENNGE One / TrustLogin by GMO: 日本国内のビジネス慣習やサポートを重視する場合に選ばれる、国産のIDaaSサービスです。

IDaaS選びのポイント

自社に最適なIDaaSを選ぶ際は、以下の点に注目しましょう。

  1. 連携アプリの数: 自社で利用しているSaaSが、標準で連携リストに含まれているか。
  2. オンプレミスとの連携: 社内のActive Directoryなどとリアルタイムで同期ができるか。
  3. サポート体制: 特にトラブル時の対応速度や、日本語ドキュメントの充実度。

まとめ

IDaaSは、もはや「便利なツール」ではなく、クラウドネイティブな企業にとっての「必須インフラ」です。

  • SSO・MFA・プロビジョニングをクラウドで統合管理。
  • ゼロトラスト最小権限の原則を具体的に実装するための最強の武器。
  • 管理者の負荷を減らし、ユーザーの利便性と安全性を同時に高める。

次回の第42回では、これらの認証をネットワークの根幹で支える最新技術パスキー(Passkey)とFIDO2の仕組みについて、パスワードレス時代の到来をテーマに解説します。

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