ビジネスを加速させる上で、自社で保有する個人データを外部企業と連携させる場面は避けて通れません。「発送作業を外注する」「グループ会社で顧客データを共有する」「他社とデータ連携を行う」など、その形は様々です。
ここで実務担当者を悩ませるのが、「本人の同意が必要なケースと、不要なケースの境界線」です。
今回は、個人情報保護法における「第三者提供」の考え方と、その例外となる「委託」「共同利用」の区別について、公式ガイドラインの根拠をもとにスッキリ整理していきます。
原則は「第三者提供=本人の同意」が必要
個人情報保護法(第27条第1項)では、あらかじめ本人の同意を得ることなく、個人データを第三者に提供してはならないのが大原則です。しかし、現代の複雑なビジネスにおいて、あらゆる外部連携に個別の同意を得ることは現実的ではありません。
そこで法律は、「実質的に、提供元と提供先が一体とみなせる、あるいは提供元の管理下にある」と判断できるケースについて、同意を不要とする例外を設けています。
決定的な違いは「誰の目的で」使うか
実務で迷う「3つの形態」を、公式の定義を引用しながら整理しましょう。
① 委託(同意不要)
自社の業務を遂行するために、その範囲内で個人データを扱わせる形態です。
【引用:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)】
個人情報取扱事業者が、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データの取扱いの全部又は一部を委託することに伴って当該個人データが提供される場合
出典:個人情報保護委員会「ガイドライン(通則編)」
- 実務の例: ダイレクトメールの発送代行、クラウドサーバーへのデータ保存、給与計算の外部委託。
- ポイント: 委託先は「自社の手足」として動くため、第三者には当たらない(同意不要)と解釈されます。
② 共同利用(同意不要)
特定の者(グループ会社等)との間で、共同でデータを利用する形態です。
【引用:個人情報保護法 第27条第5項第3号】
特定の者との間で共同して利用される個人データが当該特定の者に提供される場合であって、その旨並びに……事項について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いているとき
- 実務の例: ホールディングス内での顧客情報共有、ポイントカードの共同運営。
- ポイント: 「誰が」「何の目的で」使うかをあらかじめ公表していれば、個別の同意は不要です。
③ 第三者提供(原則、同意が必要)
提供先が、「自らの目的」でデータを利用する形態です。
- 実務の例: 他社の広告配信サービスへのデータ提供、名簿業者への販売、提携先への顧客紹介。
- 判断基準: 提供先が独自の判断でデータを加工・利用し、自身の利益のために活用する場合は、これに該当します。
判断に迷った時の「実務的思考フロー」
「魔法の質問」をさらに公式の見解に近づけると、以下のようになります。
「提供先は、提供元の指示通りに動くだけか、それとも自ら利用目的を決めているか?」
個人情報保護委員会のQ&A(Q12-5)でも、委託と第三者提供の区別について触れられています。
- 委託: 提供元が利用目的を決定し、提供先はその範囲内でのみ取り扱う。
- 第三者提供: 提供先が自ら利用目的を決定し、自身の事業のために利用する。
例えば、MA(マーケティングオートメーション)ツールに情報を入れるのは「委託」ですが、ツール提供会社がそのデータを「自社のAIの学習や他社へのレコメンド」に使うのであれば、それは「第三者提供」の同意が必要になる、というわけです。
プロとしてのアドバイス:契約とポリシーのチェック
形態が決まったら、実務家(個人情報保護士)として以下の「落とし込み」を行います。
- 委託の場合: 契約書に「委託先の監督」に関する条項(安全管理、再委託の制限等)を盛り込む。
- 共同利用の場合: プライバシーポリシーに「共同利用の規定」が不足なく記載されているか確認する(個人情報保護委員会のチェックリストを参照)。
- 第三者提供の場合: 同意取得のフローを設計し、提供時の「記録作成・保存」の義務を果たす。
まとめ:正しく整理して「透明性」のあるビジネスを
外部とのデータ連携は、正しく整理すればビジネスの大きな武器になります。
- 委託: 「自社の手足」としての活用(監督が鍵)。
- 共同利用: 「グループの資産」としての活用(公表が鍵)。
- 第三者提供: 「外部への提供」(同意が鍵)。
この3つの区別を明確にすることで、「この案件は規約修正だけで進められます」と、スピード感を持って法的に正しいアドバイスができるようになります。
【免責事項】
本記事の内容は、公開時点の法令およびガイドラインに基づいた一般的な情報提供を目的としています。個別の契約内容や実態によって法的判断は異なります。実務への適用にあたっては、必ず弁護士等の専門家へご相談ください。


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