公開鍵暗号方式とは?仕組みとメリット、共通鍵方式との違いを徹底解説

IT用語

インターネットで安全に情報をやり取りする際、裏側で必ずと言っていいほど使われているのが「公開鍵暗号方式」です。前回のデジタル証明書や、その基礎となるSSL/TLSにおいても、この暗号化の仕組みがセキュリティの根幹を支えています。

「鍵が2行ある」「一方の鍵でしか開けられない」といった、少し複雑に感じるこの方式について、その歴史的背景から具体的なアルゴリズム、実務での活用シーンまでを網羅的に解説します。

公開鍵暗号方式の画期的なアイデア

従来の暗号化(共通鍵暗号方式)では、暗号化と復号(元に戻すこと)に「同じ鍵」を使っていました。しかし、この方式には「鍵をどうやって安全に相手に渡すか」という「鍵配布問題」という致命的な弱点がありました。

この問題を解決したのが、1970年代に考案された「公開鍵暗号方式」です。最大の特徴は、「暗号化するための鍵」と「復号するための鍵」を別々にするというアイデアにあります。

仕組み:ペアになる2つの鍵

公開鍵暗号方式では、数学的に密接に関連した2つの鍵をペアで生成します。

  1. 公開鍵(Public Key): 誰にでも見せてよい鍵。データを「暗号化」するために使います。
  2. 秘密鍵(Private Key): 本人だけが厳重に保管する鍵。暗号化されたデータを「復号」するために使います。

この方式の優れた点は、「公開鍵で暗号化したデータは、対になる秘密鍵でしか開けられない」という性質です。

具体的なやり取りの例

AさんがBさんに秘密のメッセージを送りたい場合、以下の手順を踏みます。

  1. Bさんは自分の「公開鍵」をAさんに送る(盗まれても問題ありません)。
  2. Aさんは、もらったBさんの「公開鍵」を使ってメッセージを暗号化する。
  3. 暗号化されたデータがBさんに届く。
  4. Bさんは自分だけが持つ「秘密鍵」でメッセージを復号する。

途中で誰かがデータを盗んだとしても、復号に必要な「Bさんの秘密鍵」を持っていないため、中身を読むことはできません。

なぜ「公開鍵」から「秘密鍵」がバレないのか?

「対になる鍵なら、公開鍵から秘密鍵を計算できるのでは?」という疑問が湧きますが、ここには高度な数学的理論が使われています。

最も有名なアルゴリズムである「RSA暗号」では、「巨大な数の素因数分解の困難さ」を利用しています。 例えば、「313 × 617」を計算するのは簡単ですが、「193,121」という数字だけを見て、それがどの素数の掛け算でできているかを導き出すのは、コンピュータであっても膨大な時間がかかります。この計算時間の差が、安全性の根拠となっています。

近年では、より短い鍵長で高い安全性を確保できる「楕円曲線暗号(ECC)」なども、実務(スマートフォンや仮想通貨など)で広く普及しています。

公開鍵暗号方式のメリットとデメリット

メリット

  • 鍵配布問題の解決: 鍵(公開鍵)を公道にさらしても安全なため、不特定多数との通信に適しています。
  • 管理コストの低さ: ユーザーが増えても、各自が1ペアの鍵を持てば済むため、管理が容易です。

デメリット

  • 処理速度が遅い: 複雑な数学演算を必要とするため、共通鍵暗号方式に比べて数百倍〜数千倍の時間がかかります。
  • 真正性の確認が必要: 相手から送られてきた公開鍵が、本当に本人のものかを確かめる手段が必要です。ここでデジタル証明書が必要になります。

ハイブリッド暗号方式:実務での黄金パターン

前述の通り、公開鍵方式は安全ですが遅いのが難点です。そこで、現代のWeb通信(HTTPS)では、両方の良いとこ取りをした「ハイブリッド暗号方式」が採用されています。

  1. 鍵の受け渡し: 「公開鍵暗号方式」を使って、その場限りの「共通鍵」を安全に共有する。
  2. データの送受信: 共有した「共通鍵」を使って、高速な共通鍵暗号方式で通信を行う。

このリレーによって、セキュリティとスピードを両立させています。

公開鍵暗号のもう一つの顔:デジタル署名

公開鍵暗号方式は、データの秘匿だけでなく「本人が送ったものであることの証明」にも使われます。これを「デジタル署名」と呼びます。

今度は逆に、「本人の秘密鍵で暗号化」を行います。そのデータが「本人の公開鍵」で正しく復号できれば、それは「秘密鍵を持つ本人だけが作成したデータである」という証明になります。

この技術の詳細については、デジタル署名の記事で詳しく解説します。

まとめ

公開鍵暗号方式は、現代のネットワークセキュリティにおいて最も偉大な発明の一つです。

  • 公開鍵(誰でもOK)秘密鍵(本人限定)のペアを使用する。
  • 「鍵を安全に渡す」という問題を数学的に解決した。
  • 実務では、速度を補うためにハイブリッド暗号方式として利用される。

この仕組みを理解しておくことで、情報処理試験の計算問題はもちろん、サーバー証明書の設定やVPNの構築、SSHによるリモートアクセスといった実務上のトラブルシューティングにも強くなれるはずです。

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