個人情報の定義を学び、ライフサイクルの流れを把握したら、次は「具体的にどう守るか」というフェーズに入ります。個人情報保護法では、個人データを安全に管理するために必要な措置(安全管理措置)を講じることが義務付けられています。
この措置は、単に「パスワードをかける」といったIT技術の話だけではありません。組織全体で網羅的に取り組むべき「4つの柱」と、近年重要度が増している「委託先・海外環境の管理」で構成されています。
組織的安全管理措置:仕組みとしての守り
「誰が責任者で、事故が起きたら誰に報告するか」という組織内の体制整備です。
- 責任者の設置: 個人データの取扱いに関する責任者(個人情報保護管理者など)を設置し、役割を明確にします。
- 報告連絡体制の構築: 漏洩やその「兆候」を把握した際、現場から責任者、そして経営層や当局へ報告するフローをあらかじめ策定します。
- 点検と監査: 決めたルール(規程)通りに運用されているか、定期的な自己点検や内部監査を実施します。
人的安全管理措置:人としての守り
どれほど強固なシステムを作っても、扱う「人」の不注意や知識不足があれば情報は漏洩します。
- 定期的な教育: 全従業員に対し、eラーニングや研修を行い、最新の脅威やルールの周知を徹底します。
- 誓約書の締結: 入社時および退職時に、個人データの秘密保持に関する誓約書を交わします。
- SNS利用等の指導: 業務上の情報をSNSに投稿しないなど、現代的なリスクへの教育もここに含まれます。
物理的安全管理措置:場所としての守り
情報の「物理的な盗難」や「のぞき見」を防ぐための対策です。
- 入退室管理: 個人データを取り扱う区域を限定し、ICカード等で入退室の記録を残します。
- 盗難・紛失の防止: ノートPCのワイヤーロック、書類の施錠保管、画面覗き見防止フィルターの装着などを実施します。
- 媒体の廃棄: 個人データが記載された書類のシュレッダー処理や、HDDの物理破壊、データ消去証明書の取得を徹底します。
技術的安全管理措置:システムとしての守り
ITの力で不正アクセスや誤操作による漏洩を防ぐ対策です。
- アクセス制御: 業務に必要な人間だけが、必要な範囲のデータに触れるよう権限設定を最小化します。
- 識別と認証: ユーザーIDとパスワードに加え、二要素認証(OTPや生体認証)を導入し、なりすましを防ぎます。
- 外部からの不正アクセス防止: ファイアウォールの設置や、ウイルス対策ソフトの導入、OSの最新アップデートを管理します。
【重要】委託先の監督:自社以外への「守り」の延長
実務では、データ入力や配送を外部業者に「委託」することが多々あります。この際、「外注先が漏らしたから自社は関係ない」という言い訳は通用しません。
- 選定基準の策定: 安全管理措置を適切に講じている業者かを事前に評価します。
- 契約の締結: 安全管理措置の内容、再委託の制限、事故時の報告義務などを契約書に明記します。
- 定期的モニタリング: 委託先がルールを守っているか、定期的に報告を受けたり実地調査を行ったりします。
【最新トレンド】外部環境の把握:クラウド利用の落とし穴
昨今では、海外のクラウドサービス(AWS、Google Cloudなど)やSaaSツールを利用することが一般的です。
- 外国の法制度の把握: 個人データを保管するサーバーが所在する国(例:アメリカ、シンガポールなど)の個人情報保護制度を把握した上で、適切な安全管理措置を講じる必要があります。
実務の視点:事故発生時の「最初の1時間」
組織的措置の実効性が試されるのは、事故が起きた時です。現場では以下の「初動」を徹底しましょう。
- 事実確認と隔離: 被害拡大を防ぐためにネットワーク遮断や、該当アカウントの停止を行います。
- 報告: 責任者へ即座に報告し、報告義務の対象(1,000件超、不正アクセス、要配慮情報の漏洩等)か判断します。
- 証拠保存: 原因究明のために、アクセスログや操作記録を消去せず確実に保存します。
まとめ:4つの措置は「掛け算」で機能する
安全管理措置を体系的に理解すると、自社のセキュリティの「抜け漏れ」が見えるようになります。
- 組織: 指揮系統は明確か?
- 人: 知識はアップデートされているか?
- 物理: 誰でも触れる場所に置いていないか?
- 技術: 最新の防御は機能しているか?
この「4つの視点」に「委託先管理」を加えた立体的な守りこそが、個人情報保護士が設計すべき安全管理のゴールです。まずは自社のルールが、この4つの柱のどこをカバーできていないか、棚卸しすることから始めてみてください。
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