はじめに:ビジネス文書は「情報のパズル」である
ビジネス文書(特に社外文書)には、何十年も変わらない「型」が存在します。「なぜこんなに決まりごとが多いのか」と思うかもしれませんが、この型を守ることで、受け取った相手は「誰から、いつ、何の目的で届いたのか」を瞬時に判断できます。
秘書検定2級では、文書の構成要素が正しい位置に配置されているか、言葉の組み合わせが適切かが厳格に問われます。今回は、パズルを組み立てるように文書を完成させる「形式のルール」を解説します。
文書を構成する「7つのパーツ」
社外文書は、上から順に以下の7つのパーツで構成されます。この配置を視覚的に覚えるのが最短ルートです。
- 日付: 右上に配置。
- 宛名: 左上に配置。相手の社名、役職、氏名を正確に書く。
- 発信者: 日付の下(右側)に配置。自分の社名、役職、氏名を書く。
- 件名(タイトル): 中央に配置。一目で内容がわかるように。
- 前文: 頭語(拝啓など) + 時候の挨拶 + 感謝の言葉。
- 主文: 「さて」「つきましては」で始める本題。
- 末文: 結びの言葉 + 結語(敬具など)。
ハックのポイント: 「宛名は左上、自分は右下(日付の下)」という左右の対比を意識してください。相手を敬い、自分を一歩下げるという敬語のロジックが、文書のレイアウトにも反映されています。
「頭語」と「結語」の切っても切れない関係
ビジネス文書で最もミスが多いのが、最初(頭語)と最後(結語)の組み合わせです。これはセットで決まっており、入れ替えは不可能です。
| 種類 | 頭語(はじめ) | 結語(おわり) | 特徴・使い分け |
| 標準 | 拝啓(はいけい) | 敬具(けいぐ) | 最も一般的。迷ったらこれ。 |
| 丁寧 | 謹啓(きんけい) | 謹白(きんぱく) | 目上の人や、改まった内容の時。 |
| 急ぎ | 急啓(きゅうけい) | 草々(そうそう) | 前文(挨拶)を省く際。 |
| 返信 | 拝復(はいふく) | 敬具 | 相手の手紙への返事の時。 |
覚え方のコツ:「拝啓」の「拝」は拝む、「敬具」の「敬」は敬う。どちらも相手への敬意を示す漢字が含まれているセットが標準、と覚えましょう。
主文を引き立てる「さて」と「つきましては」
本題に入る際、いきなり要件を書き出すのはマナー違反です。
- さて: 挨拶から本題へと話題を切り替えるスイッチ(接続詞)。
- つきましては: 具体的なお願いや案内を提示する際のスイッチ。
この2つの接続詞を正しく使い分けることで、文書にリズムが生まれ、読み手に「ここからが重要だ」という合図を送ることができます。
箇条書きを締める「記」と「以上」
案内状などで、日時や場所を箇条書きにするスタイルを「記書き(しがき)」と呼びます。
- 「記」: 中央に配置。ここから箇条書きが始まる合図。
- 「以上」: 箇条書きの最後、右下に配置。ここで情報が終わりである合図。
試験での注意点: 記述問題で「記」を書いたのに、最後に「以上」を書き忘れると大きな減点対象になります。「記」と「以上」はセットで一つのカプセルだと考えましょう。
まとめ:形式を守ることは相手を尊重すること
第8回のポイントを整理します。
- 日付・発信者は「右」、宛名は「左」のレイアウトを厳守する。
- 「拝啓」には必ず「敬具」をセットにする。
- 時候の挨拶の後に「さて」で本題へ切り替える。
- 「記」を書いたら、必ず右下に「以上」を添える。
ビジネス文書の形式をマスターすることは、相手に「私はルールを理解している信頼できる人間です」というメッセージを送ることに他なりません。この型を身につければ、どんなに難しい依頼も、礼儀正しい一通の文書として整えることができるようになります。
次回、第9回は「ビジネス文書:表現編」です。一気に難易度が上がる「時候の挨拶」12ヶ月分を、暗記ではなく「体感」で覚えるハックを伝授します。


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